産休復帰後や産休育休中にふるさと納税を活用して少しでも家計の足しにしたいと考える方は多いですが、育休中ならではの年収の変化や非課税となる手当の存在によって、通常とは異なる判断が必要になります。
いつもの感覚で寄付をしてしまうと、やらないほうがいい年収のラインを下回ってしまったり、シミュレーションの結果よりも控除額が少なくなって自己負担が増えてしまったりすることも珍しくありません。
特に育休明けで4月復帰のタイミングなどは、給与と賞与の計算が複雑になりがちですので、正しい知識を持って慎重に進めることが大切です。
- 産休や育休中の給付金がふるさと納税の計算に含まれない理由
- 復職した年の年収見積もりで失敗しやすい時短勤務や賞与の罠
- 医療費控除や住宅ローン控除と併用する際の優先順位と注意点
- 夫婦単位で損をしないための配偶者控除と夫の限度額への影響
産休明けのふるさと納税で失敗しない基礎知識

産休や育休から復帰した年は、ライフスタイルだけでなく税金の計算のベースとなる収入構造も大きく変化します。まずは、絶対に押さえておきたい基本的なルールと、多くの人が陥りがちな勘違いについて整理しておきましょう。
産休育休中にふるさと納税はできますか?
結論から言うと、制度上はいつでも誰でもふるさと納税を行うこと自体は可能です。休業中であっても、気に入った自治体に寄付をして返礼品を受け取ることに制限はありません。
しかし、重要なのは「税金の控除が受けられるかどうか」という点です。ふるさと納税の最大のメリットは、寄付した金額のうち2,000円を超える部分が所得税や住民税から控除されることですが、これには「その年に支払う税金があること」が大前提となります。
もし、1月1日から12月31日までの1年間ずっと育休中で、会社からの給与収入がゼロだった場合、そもそも納める税金が発生しません。このケースでふるさと納税を行うと、税金の控除は一切受けられず、寄付した金額の全額が自己負担(純粋な寄付)となってしまいます。
注意点
「夫の扶養に入っているから夫の税金から引かれるのでは?」と誤解されることがありますが、ふるさと納税はあくまで「寄付をした本人(名義人)」の税金からしか控除されません。
産休復帰後にふるさと納税はできますか?
復職した年であれば、その年の1月から産休に入るまでの給与と、復職してから年末までの給与が発生するため、課税される年収が存在します。したがって、復帰した年はふるさと納税の恩恵を受けられる可能性が高いです。
ただし、フルタイムで働いていた前年や前々年と比べると、年収は大幅に下がっているはずです。そのため、「以前はこれくらい寄付できたから今年も大丈夫だろう」という感覚で寄付をしてしまうと、限度額をオーバーしてしまうリスクが非常に高くなります。
復職年は「できるかできないか」ではなく、「いくらまでなら損をしないか」を厳密に見極める必要があります。
ふるさと納税の計算で産休手当は対象外

シミュレーションを行う際に最も間違いやすいのが、休業中に受け取った給付金の扱いです。以下の給付金は、社会政策的な配慮から税法上「非課税」と定められています。
年収に含めてはいけない非課税所得
- 出産手当金(健康保険から支給)
- 出産育児一時金(分娩費用の補助として支給)
- 育児休業給付金(雇用保険から支給)
これらは手元に入ってくるお金としては数百万円規模になることもありますが、税金の計算上は「収入ゼロ」として扱われます。ふるさと納税の限度額計算における「年収」とは、あくまで会社から支給される「課税対象の給与や賞与」のことです。
うっかりこれらの給付金を年収に加えてシミュレーションをしてしまうと、実際よりもはるかに高い限度額が表示されてしまい、結果として数万円単位の損をすることになりかねません。
育休中のふるさと納税シミュレーション
では、具体的にどのように年収を見積もればよいのでしょうか。復職する年の年収は、以下の要素だけを足し算して算出します。
| 期間 | 計算に含めるもの |
|---|---|
| 1月1日〜産休開始前 | 支給された給与・賞与の総支給額(額面) |
| 産休・育休期間中 | なし(給付金はすべて除外) |
| 復職日〜12月31日 | 復職後に支給される給与・賞与の総支給額(額面) |
もし10月に復職する場合、その年の年収は「1月〜産休入り前の給与(もしあれば)」と「10月・11月・12月の3ヶ月分の給与+冬の賞与(あれば)」の合計となります。源泉徴収票が手元にない段階では、給与明細を一枚ずつ確認して集計するのが確実です。
ふるさと納税をやらないほうがいい年収は?
年収が極端に低い場合、ふるさと納税を行うメリットがない、あるいは持ち出しになるケースがあります。目安として、以下のラインを意識してください。
まず、年収が103万円以下の場合、所得税がかからず、ふるさと納税による控除メリットはほぼありません。また、住民税の非課税限度額(自治体によりますが、概ね給与収入で100万円前後)を下回る場合も同様です。
さらに、年収が201万円以下の配偶者(妻と仮定)の場合、ご自身のふるさと納税を行うよりも、夫の扶養(配偶者控除・配偶者特別控除)に入ることで世帯全体の税金を下げた方が有利なケースが多いです。
特に年収150万円前後の場合、ふるさと納税の限度額自体が数千円〜1万円程度しかなく、2,000円の手数料を引くと手元に残るメリットは非常に小さくなります。
判断基準
年収200万円未満の場合は、「ふるさと納税はやらない」と割り切るのも賢い選択です。無理に数千円の返礼品を狙うより、手続きの手間を省くほうが精神的にも楽かもしれません。
時短勤務による年収減少と限度額への影響
復職後に「短時間勤務制度(時短勤務)」を利用する場合、年収の見積もりにはさらなる注意が必要です。多くの企業では「ノーワーク・ノーペイ」の原則により、短縮した時間分の給与がカットされます。
例えば、8時間勤務から6時間勤務に変更すると、単純計算で基本給は25%カットされます。さらに残業代もつかなくなるため、年収ベースではフルタイム時代の7割程度まで落ち込むことが一般的です。
「基本給だけ少し減るくらいかな」と甘く見積もっていると、実際の源泉徴収票を見たときに想定よりも年収が低く、ふるさと納税の限度額をオーバーしていたという事態になりかねません。復職後の最初の給与明細を確認し、新しい支給額をベースに年収を再計算することをおすすめします。
産休明けのふるさと納税を成功させる実践ガイド

基礎知識を押さえたところで、次はより実践的な戦略について解説します。復帰のタイミングや他の控除との兼ね合いを理解し、賢く制度を活用しましょう。
育休明けで4月復帰時のふるさと納税戦略
4月に復職する場合、1月から3月までは収入がゼロですが、4月から12月までの9ヶ月間は給与が発生します。一見すると十分な年収になりそうですが、ここでも「賞与(ボーナス)」が大きな変数となります。
夏のボーナスの査定期間は、多くの企業で「前年の10月〜3月」に設定されています。この期間中に育休を取得していた場合、夏のボーナスは「ゼロ」または「寸志程度」になる可能性が高いです。冬のボーナスについても、査定期間によっては満額支給されないことがあります。
4月復帰の方は、毎月の給与×9ヶ月分に加え、ボーナスは「出ないもの」として厳しめに見積もっておくのが安全策です。オンラインのシミュレーターを使う際は、「ボーナスなし」の設定で計算してみましょう。
医療費控除との併用で限度額が下がる注意点
出産した年は分娩費用や入院費がかかるため、「医療費控除」を利用する方も多いでしょう。しかし、医療費控除は課税対象となる所得を減らす効果があるため、結果としてふるさと納税の限度額も押し下げてしまいます。
一般的に、医療費控除額が増えれば、ふるさと納税の限度額はその2%〜4.5%程度減少します。例えば医療費控除が30万円ある場合、限度額が数千円〜1万円程度下がる可能性があります。
また、医療費控除を受けるためには確定申告が必須です。ここで絶対に忘れてはいけないのが、「確定申告をするとワンストップ特例申請が無効になる」というルールです。
医療費控除の申告書を作る際には、必ずふるさと納税の寄付金控除も一緒に入力し直す必要があります。これを忘れると、寄付金控除が適用されず全額自腹になってしまいます。
住宅ローン控除の足切りを防ぐ方法

住宅ローン控除がある場合、さらに計算は複雑になります。住宅ローン控除は「税額控除」といって、計算された所得税から直接差し引かれる強力な制度です。
復職年は年収が低いため、元々の所得税額が少なくなっています。そこにふるさと納税を行うと、課税所得が減り、所得税がさらに少なくなります。すると、住宅ローン控除で引ききれるはずだった枠が余ってしまい、使いきれずに消滅(足切り)してしまうリスクがあるのです。
所得税から引ききれなかった分は住民税から控除されますが、住民税側にも上限(前年課税所得の5%など)があります。
対策:ワンストップ特例制度の活用
医療費控除がなく、住宅ローン控除が2年目以降であれば、「ワンストップ特例制度」を利用することをおすすめします。ワンストップ特例の場合、控除はすべて「住民税」から行われるため、所得税の住宅ローン控除枠を邪魔せず、無駄なく両方の制度を活用できる可能性が高まります。
配偶者控除が夫のふるさと納税に与える影響
復職年の年収が下がると、自分自身が夫の「配偶者控除」や「配偶者特別控除」の対象になることがあります。これは世帯全体の税負担を下げる嬉しい話ですが、夫側のふるさと納税には注意が必要です。
妻を扶養に入れることで夫の課税所得が下がると、連動して夫のふるさと納税の限度額も少し下がります(数千円〜1万円程度)。
夫が毎年限度額ギリギリまで攻めているタイプの場合、妻が復職した年は計算が狂ってオーバーしてしまう危険があります。今年は夫側のシミュレーション条件も「配偶者控除あり」に変更して再計算してもらいましょう。
産休明けのふるさと納税は年末まで待つ
ここまで見てきた通り、産休・育休明けの年は不確定要素が多すぎます。子どもの体調不良で復職日がずれたり、急な欠勤で給与が減ったりすることも日常茶飯事です。
そのため、最も確実なリスク回避策は「12月まで寄付を待つ」ことです。12月の給与明細と賞与明細が出揃い、その年の年収がほぼ確定した段階で、改めて正確なシミュレーションを行ってください。
そして、算出された限度額ギリギリを狙うのではなく、数千円から1万円程度の余裕(バッファ)を残して寄付を行うのが、産休明けの賢いふるさと納税のやり方です。復職という大きな変化の年だからこそ、守りを固めつつ、お得な制度を楽しんでくださいね。

