こんにちは。うるラボ、運営者の「レイ」です。
ホタテの美味しい季節、楽しんでいますか? 私もホタテの貝柱は大好きなんですが、調理中にふと「この黒い部分(ウロ)って食べられるんだっけ?」と疑問に思うことがあります。
そして、もし「ホタテのウロを食べてしまったら」どうなるんだろう、と不安になって検索している方もいるかもしれませんね。特に、食べた後に「しびれ」や「下痢」のような症状が出たら、本当に心配になると思います。
中には、子供が間違って食べてしまったケースや、ベビーホタテならウロも大丈夫だと思って食べたケース、少量なら平気かな?と迷った方もいるかもしれません。また、貝毒は加熱すれば消える、という話を聞いたことがあるかも知れませんね。
この記事では、ホタテのウロを食べてしまった時の具体的な対処法や、ウロが持つ毒性(危険性)について、詳しくまとめていこうと思います。
- ウロを食べた時の2つの主な危険性(貝毒・重金属)
- 緊急性の高い症状(しびれ・麻痺)とは
- 症状が出た場合の具体的な対処法と病院受診の基準
- ウロに関するよくある誤解(加熱の効果やベビーホタテの安全性)
ホタテのウロを食べてしまったら?症状と対処法
万が一、ホタテのウロ(あの黒い肝みたいな部分ですね)を食べてしまったら…。一番心配なのは「体に害があるのか」ということだと思います。まずはパニックにならず、ご自身の体調を冷静に観察することが大切です。
まずは確認|しびれや下痢はないか
ウロを食べてしまった後に、まずセルフチェックしてほしいのが「しびれ」と「下痢」の2つの症状です。
特に注意が必要なのが「しびれ」です。もし、食後30分くらいして、口唇、舌、指先などにピリピリとした「しびれ」を感じたら、それは「麻痺性貝毒(PSP)」の初期症状かもしれません。これは非常に緊急性が高い状態です。
もう一つが「下痢」です。食後30分から数時間して、激しい下痢や腹痛、吐き気が始まった場合、これは「下痢性貝毒(DSP)」の可能性があります。こちらも辛い症状ですね。
食べた量や時間、そして「どんな症状が出ているか」をしっかり把握しておきましょう。
症状別の病院へ行く基準

症状によって、とるべき行動の緊急度がまったく違ってきます。
【最優先】すぐに救急車(119番)を!
以下の症状が少しでも出たら、命に関わる「麻痺性貝毒」の可能性があります。絶対に様子を見ず、直ちに救急車を呼んでください。
- 口、舌、指先の「しびれ」
- 顔がこわばる感じ
- ろれつが回らない
- 息苦しさ、呼吸がしにくい
【推奨】速やかに病院を受診
以下の消化器症状の場合は「下痢性貝毒」が疑われます。麻痺性貝毒ほどの緊急性はありませんが、脱水症状などを起こす可能性もあるため、特に子供や高齢者の方は、早めに医療機関(内科や消化器内科)を受診することを推奨します。
- 激しい水様性の下痢
- 繰り返す嘔吐
- 我慢できない腹痛
どちらの貝毒にも、残念ながら特効薬(解毒剤)はないそうです。病院では、症状を和らげたり、体から毒素が排出されるのを助けたりする「対症療法」が中心となります。
子供がウロを食べた場合の対応

もし、子供がホタテのウロを誤って食べてしまった場合は、大人よりも注意が必要です。
毒の影響は、摂取した量だけでなく「体重」も関係してきます。体が小さい子供は、大人と同じ量を食べたとしても、体重あたりで考えると何倍も高濃度の毒素にさらされることになってしまいます。
大人が平気な少量でも、子供にとっては重篤な症状を引き起こす可能性があります。
症状がまだ出ていなくても、ウロを食べたことが確実なら、すぐに医療機関(かかりつけの小児科医や救急相談窓口)に電話で相談し、指示を仰いでください。
ウロを少量食べただけなら大丈夫?
「ほんのひとかけらだけど…」と心配になる方もいるかもしれません。
これは、食べたウロに「どの毒が」「どれくらい含まれていたか」によるので、「少量だから絶対に大丈夫」とは言い切れないのが正直なところです。
下痢性貝毒(DSP)だけなら、少量では症状が出ないか、軽い下痢で済むかもしれません。でも、もし万が一、毒性の強い麻痺性貝毒(PSP)が規制値を超えて含まれていたら…。ごく少量でも危険な可能性はゼロではないんです。
毒の含有量は見た目では全く判断できないので、「少量だから」と油断しない方が賢明かなと思います。
ウロの正体は毒を溜める黒い部分
そもそも、私たちが「ウロ」と呼んでいるあの黒い(または濃い緑色の)部分は、ホタテの「中腸腺(ちゅうちょうせん)」という内臓です。人間でいうと肝臓や膵臓のような役割を持っているんですね。
ホタテは海水中のプランクトンを食べて生きていますが、この中腸腺は、食べたものを消化・吸収し、栄養を貯め込む場所です。
問題は、この「蓄積」という機能です。海水中に有毒なプランクトン(貝毒の原因)や、重金属(カドミウムなど)があると、それらも一緒に栄養と間違えて濃縮・蓄積してしまう「貯蔵庫」になってしまうんです。
だから、貝柱やヒモは安全でも、ウロだけが危険な物質を高濃度に含んでいる可能性があるんですね。
ホタテのウロを食べてしまったらどうなる?危険性と予防

ウロを食べてしまった場合の危険性には、すぐに症状が出る「急性リスク」と、すぐには症状が出ない「慢性リスク」があります。そして、それらを防ぐために知っておくべき、大切な注意点もあります。
貝毒は加熱しても消えない
これは、私が今回調べてみて一番驚いたことですし、最も重要な注意点です。
貝毒は、加熱しても毒性が消えません!
食中毒というと「しっかり火を通せば大丈夫」と思いがちですよね。確かに細菌やウイルスは加熱で死滅します。
しかし、麻痺性貝毒や下痢性貝毒といった「貝毒」の正体は、タンパク質ではなく熱に強い化学物質です。そのため、私たちが家庭で行う「煮る」「焼く」「蒸す」といった100℃前後の通常の調理では、ほとんど分解されないんです。
「ウロも火を通したから安全」という考えは、残念ながら通用しないので、絶対に覚えておいてください。
ベビーホタテのウロも危険
「小さいベビーホタテ(稚貝)なら、ウロもまだ毒が溜まってないから安全」という話も聞くことがありますが、これも危険な誤解です。
確かに、稚貝1個あたりのウロは小さく、毒素の「絶対量」は少ないかもしれません。
でも、ベビーホタテって、味噌汁や酒蒸しで一度にたくさん食べませんか? まさに、(1個あたりの毒素は微量) × (数十個という大量摂取) = (致死量に到達) という危険な方程式が成り立ってしまうんです。
過去には、北海道でベビーホタテのウロごと約40個を食べて、呼吸停止という重篤な麻痺性貝毒の中毒を起こした事例も報告されています。
市場に出回るものは検査されていますが、安全を期すなら、ベビーホタテでもウロは取り除くべきだと思います。
ウロの毒性|麻痺性貝毒と下痢性貝毒
先ほどから出ている2つの貝毒について、少し整理しますね。
1. 麻痺性貝毒 (PSP)
- 危険度: 非常に高い(致死性あり)
- 主な症状: 口や手足のしびれ、麻痺、言語障害、最終的には呼吸筋麻痺で死亡する危険性も。
- 発症時間: 非常に速い(食後30分程度~)
2. 下痢性貝毒 (DSP)
- 危険度: 中程度(致死性はないとされる)
- 主な症状: 激しい下痢、腹痛、嘔吐、吐き気。
- 発症時間: 食後30分~4時間程度
- 予後: 通常は3日以内に回復すると言われています。
どちらも辛いですが、特に「しびれ」が出るPSPは命に関わると、強く認識しておく必要がありますね。
重金属カドミウム蓄積のリスク

貝毒が「急性リスク」だとしたら、ウロには「慢性リスク」もあります。それが、「カドミウム」という重金属の蓄積です。
カドミウムは、一度の摂取ですぐに症状が出ることは稀ですが、体に入ると排出されにくく、腎臓などに蓄積していく性質があります。長期間にわたってウロを食べ続けると、将来的に腎機能障害などを引き起こすリスクが高まる可能性があるんです。
豆知識|ウロは産業廃棄物?
ホタテの加工工場では、貝柱やヒモを取り除いた後のウロは、この「カドミウム」を含むため、食用には回されず「産業廃棄物」として処分されているそうです。
この事実を知ると、ウロが「単なる食べ残し」ではなく、「有害物質を含むため食用に適さない部位」として扱われていることがよく分かりますね。
確実な予防法はウロの除去
ここまで見てきたように、ホタテのウロには様々なリスクがあります。
貝毒や重金属のリスクを避けて、ホタテを安全に美味しく楽しむための、唯一かつ最も確実な方法は、「ウロ(中腸腺)を食べないこと」、これに尽きます。
殻付きのホタテを捌くとき、ウロ(黒い袋状の部分)は貝柱にくっついています。貝柱から指で引き剥がすようにして、ヒモやエラ(貝柱の横のヒラヒラした部分)と一緒に取り除きましょう。エラも砂を噛んでいたり食感が悪かったりするので、食べないのが一般的ですね。
ホタテのウロを食べてしまったら(まとめ)
最後に、この記事のポイントをもう一度まとめます。
もし、ホタテのウロを食べてしまったら…
- まずは冷静に体調を観察し、特に「しびれ」の有無に全神経を集中させてください。
- 「しびれ」や「麻痺」「ろれつが回らない」症状が出たら、一刻も早く救急車(119番)を呼びます。
- 「激しい下痢」や「嘔吐」が続く場合も、医療機関を受診しましょう。特に子供や高齢者は早めの相談が大切です。
最大の予防策は…
「加熱しても毒は消えない」「ベビーホタテも危険」という事実をしっかり理解し、調理の段階でウロ(黒い部分)を完全に取り除くことです。
日本のスーパーなどで市販されているホタテは、貝毒のモニタリング(監視)が行われているため、規制値を超える毒素が含まれている可能性は非常に低いとされています。私たちが安全にホタテを食べられるのは、この監視体制のおかげなんですね。
とはいえ、リスクはゼロではありませんし、特に潮干狩りや釣りなどで「自主採取」した貝は検査を受けていないため、非常に危険です。
正しい知識を持って、安全に美味しいホタテを楽しみたいですね。
※この記事は、ホタテのウロに関する一般的な情報を提供するものであり、医学的な診断に代わるものではありません。ウロを摂取してしまい、体調に少しでも不安や異常を感じた場合は、ご自身の判断で様子を見たりせず、必ず速やかに専門の医療機関にご相談ください。

